~潜入レポ~ 静かなブーム”たんちょす”に食への想いがあふれていて感動した件
2021.11.1
ハラコー
『ちょす』👌
ある秋の昼下がり、そんなあいさつ(?)をされたことがきっかけでした。
「なんすか、それ?」
もはや流行に乗り遅れることに何の恐れも感じないタフなメンタルを完成させつつある記者は質問しました。
「”たんちょす”、知らないんですか? 今、町で静かなブームを起こしてる食イベントなんですよ?」
ふむ。
しかし、果たして『静かなブーム』とは本当に流行していると捉えてよいのか。
その『アツアツの冷麺』のような表現。
もはやそれは冷麺ではなく『ラーメン』ではないのか。
それとも『見た目は子ども、頭脳は大人』みたいなヤツなのか?
そんな事を考えているとやがて純朴な記者のアタマに
『真実はいつもひとつ』
という名探偵の名言が一陣の風のごとく脳内を吹き抜け、
「そういえば記事の〆切も近い。ここはひとつ“静かなブーム”とやらの真実を取材するしかないのでは?」と思い立ち、いまやすっかり漬物石のように重くなった腰を上げ、潜入レポを敢行し、思いのほか情熱的な記事をつづったのが今回の記事です。
どうぞ、ごゆっくりご賞味ください。
目次
試食会は突然に
米俵のように重い腰を上げたものの、常に地球環境のことを憂い省エネ取材を是とする記者は、まず”たんちょす”についてググる(検索する)ことから始めました。
すぐにウェブサイトを発見。
たんちょすHP:https://tasty-tango.com/
ふむ。
どうやら、一皿の料理に生産者さん・料理人さんが想いを込めて町に発信していくステキなイベントのようだ。
ウェブページを見ているだけでおなかが空いてくる・・・。
そんな時、突然私のパソコンにMessengerの通知がプルンと音を立てて届きました。
「今晩、rootsでたんちょすの試食会があるんですけど、いかがですか?」
※rootsは峰山町にある”京丹後市未来チャレンジ交流センター”の呼称
“待てば海路の日和あり” とはまさにこの事。
いまだにダンベルのように重い腰を上げ『Yes, 高須クリニック』とつぶやき、試食会の現場に潜入しました。
試食会に潜入レポ
こ・・・これは!!
テーブルに並んだ ”たんちょす”を見て私は驚きました。
「(いい意味で)思ってたんと違う。」
色鮮やかな数々の“たんちょす”。
これはおいしそうというだけでなく、見た目にも美しい。
『タダで試食ができるらしい』という半ば炊き出しに行くかのような精神で試食会に足を運んだ我が身を日に日に冷たくなる日本海に放り投げたいような気持ちになりました。
目の前の高尚な”たんちょす”に対して心の中でこれまでの非礼をお詫びしつつ、試作された3種の”たんちょす”をいただきました。
『うぉ・・・うまい!!!!』
どの”たんちょす”にも、お肉と乳製品(チーズ・ミルク)が使われており、おかずなのかスイーツなのか、これまでにない食体験を口の中で味わいつつ、一体この”たんちょす”、どこのどなた様がこんなステキな料理を作ったのか。
試食会にお誘いしてくれたrootsの稲本さんに質問させていただきました。
「これは一体、誰が作った“たんちょす”なんですか??」
『“にく屋さん優”さん と “ミルク工房そら” さんとのコラボメニューなんですよ』
なるほど!!網野町のお肉屋さんと久美浜町のジャージー牛乳を使ったお店のコラボ!
だから、どの”たんちょす”にもお肉と乳製品が使われていたのですね!!
がぜん、どんな方が作られているのか興味がわいてきました。
たんポケ記者はさらに”たんちょす”の秘密に迫るべく、潜入することを決意しました。
“たんちょす”メニューづくり現場へ潜入
訪れたのは、久美浜町にある”ミルク工房そら”さん。
牧場で絞ったジャージー牛乳で使ったソフトクリームやピザが大人気のお店で、私も何度も利用させていただいているお店です。
ランチタイムも落ちついた15時過ぎのお店。
ここでどんな極秘メニュー開発が行われているのか・・・。
恐る恐るお店の中に潜入・・・
(念のため補足すると、ちゃんとアポをとって潜入しています。良い子は勝手に厨房に潜入しないようにしましょう。)
この日は主に、”サツマイモと鶏そぼろのたんちょす”の開発を行っていました。
メニュー開発をされている志水さん(にく屋さん優)と岡本さん(ミルク工房そら)にごあいさつさせていただき、
「先日、試食会”たんちょす”をいただいて、すっごくおいしかったです」とお伝えすると、
「今のままでは全然だめなんです!」
志水さんから意外なコメントが返ってきました。
「今日作っているものも、かぼちゃとサツマイモに滑らかさが出せていなくて。味もぼやけてしまっているので、このままではお出しできないんです」
味が・・・ぼやける?
高尚な表現に脳みそが追い付かないまま、目の前の試作品をいただきました。
「いや、すごく美味しいですよ!十分なめらかな舌触りだし、鶏そぼろとご飯の相性も抜群だし、腹持ちもよさそうなステキなメニューだと思います」
しかし記者の感想など、どこ吹く風。
「他の出店者の皆さんのレベルが高すぎて、これではダメなんです!あと1週間なのにどうしよう!!」
聞けば、この日も朝から試作づくりに取り組まれているそうです。
メニュー開発をこんなに追い込んでいるのは、昔読んだマンガ「ミスター味っ子」の世界そのもの。
本当にメニュー開発ってこんなに追い込んで行われるものなんだ・・・。
その後も、滑らかさを出すために素材を裏ごししたり、牛乳の量を微調整したり、作り込みに余念がない開発現場に脱帽するのでした。
この日は2時間ほど潜入させていただいたのですが、最後までご納得いくものをつくることができなかった模様。
“にく屋さん優”の志水さん
「ヤバい!これではホントに出せない!また眠れない日が続いてしまう!」
眠れてないんスか・・・
志水さんが恐れる他の出店者さんとはいったいどんな強豪たちなんだろう・・?
この日の試作品3点セットをお土産にいただき、自宅でいただいたのですが、間違いなくおいしい!!
しかし、その後志水さんに連絡すると
「三ツ星レストランに食材を卸されている食材ハンターの方に試食してもらったんですが、やっぱり全然ダメでした。また作り直します」というコメントをいただきました。
一体、この”たんちょす”の世界では何が起こっているのか。
三ツ星食材ハンター??
まさに味の迷宮(ラビリンス)に迷い込んでしまった思いで、たんちょすTake-Outフェア当日を迎えることになりました。
たんちょすTake-Outフェア初日に潜入
たんちょすTake-Outフェアは10月26日~27日の2日間にわたって開催されるそうで、取材させてもらった “にく屋さん優”さんと”ミルク工房そら”さんは2日目の27日に出店されるとのこと。
とはいえ、志水さんが眠れないほど恐れる他の出店者の”たんちょす”とはどんなものなのか・・。気になって仕方ないので初日から現場に潜入しようと決意し、この日は仕事を終えると早々に会場に向かいました。
開催時間は17時~20時なので、18時過ぎに会場に到着すれば大丈夫だろう。
そんな記者の甘い思惑は完全に裏切られることになりました。
会場のプラザホテル吉翠苑に到着すると、意外と会場は静かな雰囲気。
秋の夜風を心地よく浴びながら悠々と会場に向かうと、いくつか机が並んでいるのが見えました。
「たんちょすテイクアウトってここが会場であってますよね?」
お声がけすると、戦慄する言葉が返ってきました。
「あ、もう全部売り切れちゃいましたよ」
ちょ、待てよ!!
キムタクを脳内再生しつつ周囲を見渡すと4つのテーブル全てが空っぽ。
3時間のイベントなのに1時間で全店売り切れたの??ウソでしょ?!
私はこの時ようやく、志水さんが恐れる”他の出店者”たちの恐ろしさを理解しました。
『つわものどもが夢のあと・・』
思わず心の中で芭蕉の句を詠む記者をあざ笑うかのように、出展者の皆さんは店じまいをして颯爽と帰宅していきます。
え。なんなの、カッコイイ・・・
ということで、まさかの潜入失敗!!
記者として痛恨のミスを犯してしまい、密着取材した”たんちょす”が登場するイベント2日目にリベンジを誓うのでした。
たんちょすTake-Out 2日目に潜入
今日ばかりは潜入失敗は許されない。
事前のメニュー開発に潜入しておきながら当日に取材空振りとなれば、鬼編集長に熱湯を口から注がれて剣山で体に穴をあけられた末、湯切りの刑にさらされてしまうのではないか・・。
そんな恐怖を感じた記者は、イベント会場の吉翠苑で終日仕事をするという戦略、つまりイベント前からイベント会場に潜入するという手段をとりました。
イベント開始は17時。
ホテルロビーでゆっくりと仕事をしていると、何やら外が騒がしい。
手元の時計はまだ16時40分。
ざわ・・・
まさか・・・
外に出た記者は再び戦慄しました。
「ちょ、待て待て待て待て!!」
もはや脳内キムタクを召喚する余裕もありません。
この時私のアタマをよぎったのは、まさに取材のきっかけとなった
「静かなブームなんですよ」
という言葉。
何の前触れもなく、周囲でこのイベントが大きく話題に挙がるわけでもなく、当日になるとこの行列・・・。
恐るべし『静かなブーム』!!!
しかし、これまで取材した優さん&そらさんの ”たんちょす”だけはゲットせねば!!
ドキドキしながら行列に並び、なんとか狙いを定めた”たんちょす”をゲット!!
とても忙しそうにされているお2人に
「ついに完成したんですね!今のお気持ちは!?」
と、週刊誌レポーター並みの空気を読まない質問をすると
「なんとか完成にこぎつけました!味以外でも見た目に課題もあったので、ギリギリまで頑張りました!!喜んでいただけるか分かりませんが、精いっぱいつくりました」
というステキなコメントを返していただきました。
私の手元にある”たんちょす”が志水さんと岡本さんの魂の結晶のように見えます。
(手前)豚肉とチーズのみたらし
(左)かぼちゃ&サツマイモと鶏そぼろ
(奥)カリカリベーコンとホワイトチョコ
(右)ミルク工房そらのダックワーズ
そして、2日目の”たんちょす Take-Out”もわずか1時間足らずで完売御礼!!
私はこの”たんちょす”を自宅に持ち帰り、家族といただきました。
家族からは
『すごくキレイ~』
『めっちゃおいしい』
『あ!甘いのに中にお肉が入ってる!(驚きの声)』
『もう1個食べたい』
『なんで1セットしか買ってこなかったの?』
『マジでそれ(1つしか買ってこない)はない!』
と、幼児・小学生・大人まで、”たんちょす”への称賛と私への失望の声をいただくことになりました。
私が買い占めなかったことで、他の誰かのもとに届いたのならそれでよい。
涙とともにおいしさを嚙みしめながら、私はこの”たんちょす”とは何かを考えていました。
子どもから大人まで、誰が食べても美味しいと言えるものをつくることは簡単ではないはず。
私にとっては、初めて食べた試作も十分美味しかったけどメニュー開発にあそこまでこだわってご苦労されたから、子どもから大人まで誰が見ても美しく、驚きがあって、美味しい 一皿が実現したのだ、と。
そう思うと、この”たんちょす”を苦心して作られていた輝くお2人の姿が浮かんでくるのでした。
全てのお店の”たんちょす”を食べることは叶いませんでしたが、出展された全てのお店(つわもの達)には同じようにそれぞれのバックストーリーがあるのだと思います。
そんなことを考えると、まさにこの町は ”食の都” と言えるまちだと改めて確信したのでありました。
エピローグ ~たんちょすTake-Outを終えて~
後日、記者は”にく屋さん優” さんを訪れました。
「眠れぬ夜は”ちょす”のせい」と言えるほど、メニュー開発にプレッシャーを感じていらした志水さんに「イベントを終えて、今どんなお気持ちですか?」と聞くと
「ほっとしているのが一番です。やっと終わった~という気持ちが強いです。でも実はすでに、今度は自分のお店のメニュー開発に取組んでみようかという気持ちが起こってきています」
という答えが返ってきました。
あんなにご苦労されたのに、もう次のメニューのことを考えているなんて・・・スゴい。
お店を出る際、指で輪っかを作りながら志水さんに
「ちょす(ありがとうございました)」とごあいさつ。
お店の戸を閉め秋空を見上げつつ、『“たんちょす”は単発イベントではなく、食に関わる方々が次のステージに進めるよう、さらなる成長を促すジャンプ台のような食イベントなのかも・・・。』
秋風に交じり、優さんから流れてくる揚げ物のおいしいにおいを感じながら、そんなことを思うのでした。
皆さんも、ぜひ食欲の秋を堪能してくださいねっ!!
現場からは以上です!!!!
【参考】
たんちょすイベントページ:https://tasty-tango.com/
【店舗情報】
ミルク工房そら
住所:京都府京丹後市久美浜町神崎411
営業時間:10時~17時
定休日:木曜日
HP:https://tango-jersey.co.jp/
【店舗情報】
にく屋さん優
住所:京都府 京丹後市 網野町小浜100-2
電話: 0772-72-4449
営業時間:10時~19時
定休日:水曜日
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