お囃子の音が与えてくれるもの

2022.9.29

たんぽけライター

3年振りに秋祭りが開催される

”コロナ禍で中止になっていた行事が再開される”という知らせを、今年は多く耳にしたように感じる。
このたんぽけで取り上げていた、丹後の夏祭りの花火や、丹後100kmウルトラマラソン もその中の一つ。それらによって少しずつコロナ前の日常が戻ったようで、嬉しい夏だった。

季節は移り変わり、やっと秋の気配がしてきた。ある夜、散歩に出ると肌寒く「夏が去った」と身をもって感じる。
そんな私の耳に飛び込んでくる音があった。

「太鼓の音?」

なんとなく音の方へ足を進める。近づいていくにつれてハッキリとしてくる、太鼓の音と笛の音。
それは【太刀振り(たちふり)】のお囃子の音だった。

「そうか、もうそんな時期なのか」

島津地区の秋祭りはどんなことをするのか?

私が散歩で耳にしたのは、地元である京丹後市網野町島津(しまづ)地区の太刀振りのお囃子の音色。
同じ網野町で行われる大きなお祭りは7月30日の浅茂川地区の水無月祭り(かわすそ)であり、こちらは海の神様へ豊漁の願いやお礼を込めて行っている。島津地区のこのお祭りは地区の氏神である春日(かすが)神社に五穀豊穣と無病息災を願うものであり、大体10月10日前後に2日間に渡って行われる。
2日間のうちメインになるのは2日目であり、

・子どもたちによる小さいお神輿巡行
・青年によるお神輿巡行
・壮年によるお神輿巡行
・小学校高学年の男児による相撲
・地域の有志による境内の出店
・神主さんによる祈祷
・保育園年長組の男女によるお稚児さん

このように行事が盛りだくさんである。
人口の減少やコロナ禍により現在は無いものも多くなっているが
そんな中でも確実にあるのが、先ほど私がお囃子を耳にした【太刀振り】だ。

太刀振りを簡単に説明すると、
文字通り太刀を持った青年が、笛や太鼓に合わせて屋台とともに踊りながら練り歩く。これにより地区に棲みつく悪霊を追い払い、五穀豊穣と無病息災を祈る。

京丹後市では大宮町などでも行われているが、面白いのは踊りもお囃子も衣装も地区によって違うこと。
他にも島津地区は現在中学校3年生~高校3年生の男子のみが踊るが、別の区ではもっと低年齢の男女が踊っていたりする。
少ししか離れていないのに地区の特色が出ることに興味を覚えてしまう。

島津地区の太刀振りは3種類ある

さて島津地区の太刀振りであるが、

①道中振り(どうちゅうぶり)
②宵振り(よいぶり)
③宮振り(みやぶり)

の三種類がある。
道中振りというのは旧島津地区の端とされていた場所から始め、神社を終着とする太刀振りのこと。
1日目の夕方は網野町寄りの島津口区から
2日目の午前は峰山町寄りの愛宕区から
2日目の夕方は弥栄町寄りの大谷区から
春日神社まで太刀を振って舞いながら進む。
ここに先述の屋台が登場し、上には太鼓役の人たちが乗っている。
これを引くのが地域の子どもたち。神社まで到着すると労いでお菓子がもらえるので、幼少期はとても楽しみだった。
ちなみに島津にはもう一つ、小学校の前を通る間人町寄りの道があるが、この道は新しくできたものなので、ここから神社へ向かうコースはないということだった。

宵振りというのは、上記の道ではなくもっと細かく地区を周る太刀振りのこと。
文字通り夜に行われる。各地区のちょっとしたスペースにゴザを敷き、その上で踊る。
前に進まないので道中振りとは振り付けが違うのもポイントである。

そして最終日、宮振り。
すべての行事を終えて神社境内で行われるこの振りは、その年の最年長(高校3年生)から選ばれた数名だけが踊る。
やはりクライマックスだからか、振り付けもダイナミックで気合が入っている。
締めくくりとなるのでお囃子も心なしか力強い。
片手で持った太刀を前後に往復させて連続で飛び越えるところは、思わず拍手や歓声があがるほど。
こちらも陽が傾き暗くなってから踊るので、厳かな雰囲気がただよい、魅力の一つである。

今年は秋が来る

このように太刀振りは島津地区の秋祭りのメインであり、それ故、練習もしっかり行われる。
秋が近づいてくると夜に太鼓と笛の音が聞こえるようになり「秋がきたな」と実感するのだが、
ここ数年はそれがなかった。
だからといって日常が変わるわけではないのだけれど、気づいたら短い秋が通り過ぎて寒い寒い冬が来る。うまく言葉にできないが、何かが足りないような気がしていた。
だから、先日の散歩でお囃子を耳にした時はなんだかホッとしたのだ。
いつの間にか失くしたと思っていたものが、不意に見つかって心があたたかくなるような。

もしこの記事を読んで「見てみたい」と思った方は交通規制にだけ注意しつつ、是非見に来てほしい。

今年は、確かに秋が来る。


2022年島津地区秋祭り

2022年10月8日(土) 
15時30分~ 道中振り(島津口より)
18時~    宵振り(島津内の各地区10カ所)

2022年10月9日(日)
7時~    道中振り(愛宕より)
8時40分~  子どもみこし(島津内の各地区)
9時~夕方まで 神輿渡御(青年・壮年の神輿 島津内を練り歩き)
13時30分~  子ども相撲(春日神社境内)
16時30分~ 御旅場祭(お稚児さん・宮司による祈祷など 春日神社付近)
17時30分~ 道中振り(大谷より)
18時30分~ 宮振り(春日神社境内)

問い合わせ先:0772-72-0010 (島津連合区)