「新しいものと組み合わせることで丹後をより魅力的に」丹後万博を発案した峰高生・田崎明務さん

2024.3.4

川口優子

京丹後市内の高校生が中心となり開催された「丹後万博」。2022年に初めて開催され、当日は約2,500名の方でにぎわいました。実はこのイベントを発案したのは、この春峰山高校を卒業した田崎明務(たさき・あけむ)さん。田崎さんが丹後万博を発案した経緯と、イベントを通して伝えたかった思いを伺いました。
(なお、取材は卒業前の2024年1月に行いました)

京都府立峰山高校 3年 田崎明務さん 
約2,500人が来場した「丹後万博2022」(会場:丹後王国『食のみやこ』)

丹後の魅力を丹後内外の人に知ってもらえるイベントを作りたい

2022、23年と開催されているSDGsの祭典「丹後万博」は、峰山高校、丹後緑風高校網野学舎と久美浜学舎、清新高校という、府立高校4校の生徒らが中心となって行っています。発案者は、峰山高校3年の田崎明務さん。

田崎 1年生の時に受けた「いさなご探究」という授業の中で、京丹後市が人口減少、経済や伝統産業の衰退といった課題を抱えていることを知りました。その課題を解決するためには、丹後の魅力を一堂に集めて、その魅力を丹後内外の人に知ってもらうイベントを開催したらいいのではと考えました。「万博」というフレーズは、新しい文化・技術を紹介し、将来の展望を示すという意味を含んでいます。丹後で万博を行うことで、地域の魅力や可能性を来場者と共有し、発信していくことができるのではないかと感じました。

田崎さんはこの思いを企画としてまとめ、同年11月に開催された市のイベント「SDGs未来都市・ゼロカーボンシティ推進フェアin京丹後」で発表しました。

「SDGs未来都市・ゼロカーボンシティ推進フェアin京丹後」での発表

伝統に“新しい”を組み合わせる

発表した企画は『丹後万博 〜伝統×革新〜』。伝統産業に技術革新を掛け合わせることで新たなモノづくりや人間関係が生まれ丹後の可能性を拓きたいという内容でした。

田崎 少しずつでも丹後の魅力を上げていくためには、新しい視点を取り入れるという意識が大切だと思っています。丹後の“伝統的なもの”に、企業や人、技術といった“新しいもの”を組み合わせることで、新しい持続可能な魅力を作り上げていく。そんな丹後万博を開催することで、新たなモノづくりや新たな人間関係が生まれ、活性化につながると思います。

市は提案を受け、翌年度(2022年度)の開催に向けて予算化。「SDGs未来都市」として、丹後万博に「SDGsを“自分事”として捉え、将来のまちの姿を考える機会にしたい」というねらいも込めました。府立高校4校から集まった生徒らが中心となり実行委員会を結成。政策企画課主導のもと、会議を通して参加者らの思いを共有し、形にしていきました。

第1回目の丹後万博開催実行委員会のメンバー(2022年)。田崎さんは実行委員長として奔走

“丹後だから”という視点を大切に

丹後万博の開催に向けて、地元の企業や団体、大学の方々など、たくさんの人たちが協力してくれたそうです。

田崎 個人では、三野木工さん(網野町)に話を聞きに行きました。間伐材活用の話を聞いたり、木工体験をさせてもらったりする中で、箸ひとつとっても、職人の方が手間暇かけて丁寧に作られていることを体感しました。丹後万博では、そんな「職人のモノづくりに対する愛情を受け取り、大事に使っていく気持ちを伝えたい」という思いから、かんなで木を削って作る「箸作り体験」を行いました。

取材・体験させてもらった三野木工さん

イベント当日は、高校生による19のコンテンツのほか、地元の18企業・団体が出展。約2,500人が来場し、大盛況でした。

田崎 私の発案した丹後万博が予算化され、次年度には国からの予算がつくなど今後も続いていくであろうイベントにまで成長したこと、そして、高校生の力を丹後内外に示すことができたことがうれしかったです。私自身も、丹後の魅力を再発見することができ、活性化を望む気持ちがさらに大きくなりました。

周りの友だちにも変化があったと言います。

田崎 峰山高校では、丹後万博が学校をあげて行うイベントとして確立し、多くの生徒が参加してくれています。参加者は、より丹後の現状や未来について考えるようになったのではないでしょうか。

一方で「伝統×革新を十分に示せなかった部分もある」とも話します。

田崎 会議を十分に行うことができず、趣旨の確認や共有などの意思疎通がうまくできませんでした。内容も、当初想定していた「伝統×革新」とは少し離れてしまったように感じています。私は直接的には関わっていませんでしたが、2回目の開催でも、同様の印象を持ちました。高校生の発表の場に留まらず、“丹後だからこそできる”出展や、“丹後のために何ができるか”という視点を忘れずに取り組んでほしいと思っています。

丹後の魅力を創造し発信してもらいたい

田崎 京丹後市の魅力は大きく3つあると思います。1つ目は「伝統産業や特産品」です。丹後ちりめんやカニなど、他の地域に誇るべき伝統が多く存在しています。2つ目は「土地」です。海と山に囲まれ、とても自然豊かな地域です。そして3つ目は「人」です。丹後万博という提案が受け入れられ実現できたのも、市長をはじめ、市役所の方々に高校生を認めてくれる気持ちがあったからこそだと感じています。企画から開催にかけて、多くの方が私の思いに耳を傾け、ともに丹後の発展を目指してくれました。丹後というまちであったからこそ、丹後万博を実現することができたと心から思っています。

田崎 私は丹後万博を、丹後を活性化させる起爆剤にしていきたいと思っています。そのためには、丹後の人が魅力を再発見するとともに、丹後以外の方にも魅力を伝え、移住を促し、新しい視点でさらなる魅力を創造し、発信してもらう必要があると考えています。丹後をより良くしたいと思っている人に関わってほしいです。

「丹後万博で身につけた発案力や企画力、行動力を大学での研究や将来の職業において活かしていきたい」と話す田崎さん。公共政策に興味があり、将来は、グローバルな視点を持ちながら、いろいろな地域の課題を、その地域の人に寄り添いながら解決していきたいそうです。

2回目の丹後万博では「JICA関西」ブースに自主的に参加

田崎 丹後万博を通して、多くの方が丹後を愛し、もっと活性化させたいという気持ちをもっていることを知りました。企画・運営していただいた大人の方をはじめ、さまざまな方に感謝をするとともに、今後も丹後万博に関わっていきたいと思っています。高校生の力を示す場として、そして丹後の可能性の創造する場として、丹後万博がさらに発展していってほしいと願っています。

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田崎さんが丹後万博を開催できたのは、熱意と、それに伴う行動力があったからだからこそだと感じました。未来を見据え自分にできることを取り組む姿勢に、刺激をもらいました。



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