“丹後のお土産をつくりたい” 地元食材を使った「KANABO CHOCOLATE」
2022.10.13
川口優子
インスタで一目惚れ! パッケージがとってもおしゃれな「KANABO CHOCOLATE(カナボー・チョコレート)」。ずっと前から気になっていたので、思い切って、知人を通して取材を申し込んでみました。快く引き受けてくださったのは、代表の矢野裕亮さん。与謝野町にある工房をドキドキしながら尋ねると、素敵な笑顔で迎えてくださいました。「本格的」と評判の絶品チョコレートの魅力を探ってきました!
目次
カカオ豆からつくるBEAN TO BAR(ビーントゥバー)のチョコレート
「まず試食に」と出してくださったのは、それぞれ「ガーナ」「ベトナム」「タンザニア」のカカオ豆を使った3種類のチョコレート。「私に違いが分かるのだろうか」と思いましたが、食べてびっくり! 味が全然違います。
川口:ガーナ、おいしい! すごく食べやすいです。
矢野:はい。ガーナが一番食べ慣れた感じの、ナッツを感じるチョコレートだと思います。みなさん、最初はこれを選ばれるんです。うちが市販のチョコレートと違うところは、後味にしつこい苦味がないというか、まとわりつきもないというか。それがBEAN TO BAR(ビーントゥバー)の特長のひとつですね。
BEAN TO BARとは、カカオ豆からチョコレートバーになるまで、すべての製造を行うこと。矢野さんは、産地から商社等を通してカカオ豆を仕入れ、自社工房で製造し、個性豊かなチョコレートに仕上げています。
川口:甘すぎなくて食べやすいです。
矢野:うちは大体カカオ70%なんです。なので、「大人向きだね」ってよく言われます。
川口:あ、ベトナムは、ちょっと酸っぱいですね。
矢野:ベトナムはちょっと変わった感じで、スモーク臭というか酸味もあって。で、さらに酸っぱいのがこのタンザニアなんです。
川口:確かに!全然違う(笑)
矢野:チョコレートを食べていくと、だんだんこういうのが好きになってくるんですよ(笑)。僕はタンザニアが一番好きで、めちゃめちゃフルーティーで、何かフルーツを食べているような感じで。カカオ豆の産地ごとにこういった違いがうまれてくるんで、それがおもしろいですね。
川口:具体的にはどんな違いがあるんですか?
矢野:例えばガーナは、ちょっとスパイス香があったり、アーモンドとかナッツの感じ。ベトナムは、カシスとかそういうフルーツにスモーク臭がかかった感じ。タンザニアは、もっともっとフルーティーで、酸味がものすごく強くて、それこそラズベリーみたいな感じのチョコレートに仕上がるんですね。発見されてない品種もまだまだあります。
矢野:カカオ豆の皮をむいて、この中にあるのがチョコレートの原料になる「カカオニブ」というものなんです。これを、砂糖と一緒にすりつぶすんですよ。カカオニブの55%くらいは油分なので、これをすりつぶしていくとドロドロの状態になります。
矢野:これがすりつぶす機械(メランジャー)です。24時間ずっと動かしっぱなしで、最低1日はかかりますね。
川口:よくパッケージに「カカオ何十パーセント」って書いてありますけど、あればどういう意味ですか?
矢野:例えば「カカオ70%」だと、カカオが70%と、残りの30%が砂糖になります。もしくは、ミルクチョコレートやったら、例えば70%カカオに、ミルクが10%、砂糖が20%っていう割合になってくるんですね。
川口:チョコレートって、入ってるものはとってもシンプルなんですね。
矢野:そうですね。砂糖も、以前は国産のものを使ってたんですけど、今はブラジル産のオーガニックシュガーを使っています。
川口:ブラジル産!
矢野:ここの会社は、精製する過程でも悪い薬品を使わず、サトウキビを搾った後のサトウキビも畑に返して循環させるような取り組みもされていて。
川口:そういうところを選ばれるのって、とっても素敵だと思います。
矢野:すりつぶして練り上がったチョコレートは、ブロック状にして、1ヶ月くらい冷蔵庫でねかせます。
川口:1ヶ月も!
矢野:僕の場合は、なんですけど。ねかせずそのままチョコレートに仕上げる方もいらっしゃるんですけど、そのままだと、できあがりは確かにおいしいんですけど、ちょっと角があるというか、酸が強いなっていう感じがして。1ヶ月ぐらい熟成させると、それがまろやかになって、隠れていたいい香りも出てくる感じで。
川口:手間暇かけてつくるチョコレートだから、こんなにおいしいんですね。
丹後の旬の食材と組み合わせたチョコレート
川口:商品ラインアップを拝見したんですが、いろんな味があるんですね!
矢野:そうですね。試食してもらったようなベースのチョコレートに、それぞれの特長に合う丹後の食材を組み合わせています。例えば、ガーナを使った一番人気の「丹後米キャラメリゼ」という商品は、ガーナのキャラメル香とスパイシーさが、キャラメルとすごく相性がいいなと思って。ニュアンスを合わせている感じですね。一口サイズの割チョコレートで、サクサクして子どもさんでも食べやすいと思います。
川口:ちなみに、丹後米はどこのを使われているんですか?
矢野:与謝野町に茂籠さんという米農家さんがいらっしゃって、そこのお米を使わせていただいています。茂籠さんはポン菓子づくりもされていて、この前も見学に行かせていただきました。
矢野:次にオススメなのが、タンザニアの豆と、京丹後産の塩を組み合わせた「まろみ翁乃塩」です。塩分が強いので、甘みをちょっと強くしないとバランスが悪くなってしまうので、カカオは66%です。
川口:ほうじ茶が好きなので、「香ばしほうじ茶」も気になります。
矢野:これも京丹後産で、福幸農園さん(峰山町)のほうじ茶を使わせていただいています。とても香り高く、使いやすいです。
矢野:チョコレートは水分が使えないので、生ではなく乾燥させたフルーツを使うんです。乾燥イチジクとか、梨とか、もうそろそろそういったものが出てくる季節で。イチジクは、久美浜の農家さんが干しイチジクとして販売されているんですけど、それを分けてもらっていて。
川口:地元の旬の食材を組み合わせるって、めっちゃいいですね。丹後は本当にいい食材が揃っていますもんね。素朴な質問なんですが、いわゆるプレーンっていう味はないんですか? 試食させていただいたのがとてもおいしかったので。
矢野:プレーンはないんです。売ってもいいんですけど、それだと、丹後でやる意味ってあんまりないのかなと。
川口:丹後らしさ、ですか?
矢野:はい。僕はもともと料理人だったんですけど、そのとき、地元の食材に毎日触れていて、やっぱりいいなと感じていました。今は、丹後に来られた方に、このチョコレートを通して丹後の食材の良さを知ってもらいたいと思っています。食材がこの土地の強みだと思うので。プレーンだと、丹後でやる意味がないのかなと。
丹後の新たなお土産をつくりたい
川口:矢野さんって、料理人なんですね! 矢野さんがチョコレート作りを始めたきっかけが知りたいです。
矢野:出身はこっちで、高校を卒業してから東京に行って、調理師免許をとって料理をしてたんですけど、こっちに帰ってきてすぐにお世話になったのが、橋立ワイナリーさんの系列で、天橋立の文珠地区にある「ワインとお宿 千歳」という旅館で、そこで15年くらい働いていました。橋立ワイナリーの仕事で、婚礼の料理を作ったりもしていたんですけど、その時、農家さんの畑に行って、畑から直接野菜をいただいてくるような、それぐらい丹後の食材にのめり込んでいました。
川口:食材に惹かれてたんですね。
矢野:そうですね。それで、漠然と自分でお店を起業してやるのかなぁと思ってたんですけど、でも、いい料理人さんいっぱいいるし。橋立にないものってなんだろうって思った時に、丹後でしっかりつくり込んだ、「丹後といえばこれ」っていうようなお土産ってないなって感じて。それやったら料理じゃなくて、お土産となるチョコレートをつくろうと。今でこそお土産も増えてきましたけど。
川口:どうしてチョコレートだったんですか?
矢野:コース料理のデザートでチョコレートを扱ってたんですけど、そのときから、チョコレートってすごく可能性あるなって感じていました。チョコレートって、カカオ豆をローストするにしても、味の調整にしても、料理に通ずるものがあるんですよね。そこに自分の技術を使える強みを感じました。
川口:商品を考える上で大切にしていることはありますか?
矢野:旬ですね。都会とは違う、旬の食材を取り入れた田舎ならではの商品っていうのがあると思うんです。これからの季節だったらこれが出てくる、あれも出てくる、みたいな。でも、商品開発がなかなか追いついてなくって。やってみたい食材って、まだまだいっぱいあるんです。
川口:確かに、そう思うと、組み合わせたらおもしろい食材はたくさんありそうですもんね。ちなみに、お店の名前である「カナボー」の由来ってなんですか?
矢野:大江山あるじゃないですか。僕は幼少期あの近くで育っていて、小学校の遠足とかキャンプとかで飽きるほど登ってたんですけど、大人になってみると、大江山の存在がすごく大きくて。自分が何か事業をするときには、大好きな大江山に何か由来のある名前にしようと思っていました。それで、(大江山にある)鬼伝説にちなんで、「鬼といえば金棒だろう」っていうことで(笑)。ロゴも、金棒がモチーフになっているんです。
川口:あ、本当だ(笑) かわいいですね。
矢野:丹後、与謝野、大江山、そんなイメージをぎゅっと詰め込んでいる感じですね。
循環を意識した取り組みを
「環境にも目を向けたい」と矢野さん。食を循環させるような取り組みや、パッケージにも配慮していきたいと話します。
矢野:カカオ豆の外皮を「カカオハスク」っていうんですけど、これを、食材を提供いただいている農家さんに、果物やお米を育てる畑の肥料に使ってもらうという取り組みをやっています。
川口:肥料にできるっていいですね。
矢野:パッケージも、プラスチックの袋を使っているんですけど、少しずつですけど、紙のパッケージに変更していってます。紙も、与謝野町の特産品である丹後ちりめんの風合いが感じられるものを選びました。
川口:パッケージのイラストがすごくかわいいですよね。
矢野:そうなんですよ。イラストを描かれている余根田直樹さんのインスタグラムを見て、一目ぼれして、「絶対この人や」と思って、DMを送りました。
川口:すごい!
矢野:こちらの想いを伝えたら、一発でこのデザインをあげてくれて。もう変更なしで(笑)。めちゃめちゃ嬉しかったです。
取材時はリニューアル前のパッケージでしたが、10月初旬から、徐々にリニューアルされています。手触りも心地よく、あたたかみのあるデザインで、思わず手に取りたくなります。
ペアリングを楽しんで
川口:チョコレートって、どういうシチュエーションで食べるのがいいですかね。
矢野:割チョコレートは、いつでもどこでも食べられる一口サイズのものなので、ドライブ中でもいいですし、今だったらキャンプに持って行ってもいいしですし、気楽にポリポリ食べてもらえたらうれしいです。
川口:板チョコレートは?
矢野:特にオススメなのが「ペアリング」ですね。ブランデーなんかもオススメですけど、特に丹後の日本酒と合わせてほしいですね。中でも、「まろみ翁乃塩」と日本酒の相性がすごく良くて。もちろん、コーヒーや紅茶とも合いますし、(チョコレートを)ひとかけずつとか、自分なりのペアリングを楽しんでもらえたらと思います。
川口:大人の楽しみ方ですね(笑)
矢野:はい。ガブッといくのではなく、「今夜はこのひとかけをこれと合わせてみよう」っていう、そういう時間を生活に取り入れていただくのも素敵だと思います。
丹後を代表するお土産を目指して
川口:最後に、今後の展望を教えてください。
矢野:今、新しい工房を考えていまして。規模を大きくしていきたいなと思っています。また、今ある板チョコレートや割チョコレートだけじゃなく、新商品も出す予定です。丹後の食材を使いながら、「丹後のお土産といえばカナボーチョコレートだよね」といってもらえるような、丹後を代表するお土産を目指したいです。
川口:今日はチョコレートを試食させていただいてとても好きになりましたし、これを使って、今までに食べたことない丹後ならではのチョコレートがどんどん出てくると思うと、とっても楽しみです。春夏秋冬、チョコレートを通して丹後を味わいたくなりました。本当、今日はありがとうございました!
笑顔が素敵で、とっても話しやすかった矢野さん。人気の商品には、やはりそれだけのこだわりがあるんだなと感じました。これからの季節にはホットチョコレートもいいなとか、友達へのプレゼントにも最適だなとか、とても想像が膨らみます。寛ぎタイムや自分時間に味わう、プチ贅沢なチョコレート。矢野さん、本当にありがとうございました!旬の新作、楽しみにしています ^ ^
●店舗情報
KANABO CHOCOLATE(カナボー・チョコレート)
住所:京都府与謝郡与謝野町弓木204-7
TEL:0772-45-0880
▼Webサイト
https://www.tango-kanabo.com/
▼ECサイト
https://tango-kanabo.stores.jp/
▼インスタグラム
https://www.instagram.com/kanabochocolate/