夏の終わりに10年ぶりの新曲リリース!コンスト“再生”の物語(後編)

2022.8.8

川口優子

約10年ぶりに新曲をリリースする、京丹後市ゆかりのバンド「CONSTRUCTION NINE(コンストラクションナイン)」(以下コンスト)のドラム荻 弦太さんへのインタビュー。前回は、幼少期からコンスト加入、大阪時代の活動について伺いました。
後編では、丹後に帰ってからの活動や曲づくりのこと、今後の活動について伺いました。

「丹後 × 小豆島 × 大阪」それぞれの拠点での活動・曲づくり

川口:弦ちゃん(荻 弦太)の丹後に帰ってからの活動を教えてください。

荻:しばらく何もしてなかったんけど、KTR(現・京都丹後鉄道)の中で、僕らの曲「KTR」を演奏するっていう企画があって。それを3人でやったのが、復活というか、再スタートのきっかけだったと思う。あの時、すごい数の京丹後市の人が(企画に)関わってくれとって。2013年8月のこと。(KTRの曲の詳細は前回の記事をご覧ください

川口:大阪や東京でのライブにも参加してたんですか?

荻:ライブ自体はよう誘われとったんだけど。もう、それこそね、去年、一昨年はコロナ禍で。キャンセルせざるを得ない状況で。1回東京に行ったんだけど、コロナが騒がれ始めた年の、3月頭に。ほんま(中止になる)ギリギリの時だった。その後ライブはやれてないもんね。だから今は、誘われとったライブ、断ってしまったライブ、なくなってしまったライブを、もう1回ちゃんとやっていこうっていう。

川口:弦ちゃんは丹後、創ちゃん(荻 創太)は小豆島、小島さんは大阪と、みんな住んでいるところが違いますが、練習などどうしてるんですか?

荻:今は、PCでソフトを使ってる。オーディオインターフェースていう機械さえあれば、オンラインでセッションができる。

川口:なんと!ズレなくできるんですか。

荻:コンマ1秒とか。それはネットの環境次第なんだけど、曲づくり程度なら、ほぼほぼそんなストレスはない。喋りながらできるし。こんだけ離れとっても、曲はコンスタントにつくれとるかな。

川口:今、曲づくりっていうのは、どういう風に進めてるんですか?

荻:だいたい、そのバンドに1人作曲者がメインでおって、つくっていくっていうのが普通かもしれんけど、僕も創太も1から10まで曲つくれるっていうバンドで。歌詞もメロも、アレンジも。小島も、コード進行とかバックサウンドをつくれる。3人ともつくれるで、各々持ち寄って最終コンストになるっていう、曲のつくり方としては、ちょっと珍しいパターンかもしれんね。

川口:弦ちゃんって、ピアノで曲つくるんですか?

荻:うん、ピアノでつくる。自分でもカッコええなぁ思う(笑)。簡単なコード進行くらいしかできへんけど。

川口:コンストって、激しい曲も爽やかな曲も、バラードもあったりしますね。

荻:そこが狙いっちゃ狙い。あんま(他に)おるようなバンドにしたくない。自分が聴いてみたいバンドをつくろうって思うで。こういうバンドおったらええなぁという。

川口:ちなみに、レコーディングはどこでやってるんですか?

荻:ずっとお世話になってる、大阪日本橋のStudio Cooperっていうところ。僕らの音源はCooperオンリー。デモ音源からずっとだで、もう23、4歳頃のからかな。エンジニアの永田さんって方もずっと一緒で。今回、(新曲の録音で)あの空間に久しぶりに行ったんだけど、懐かしいのと、気が引き締まるのと。行くだけで、空気が変わるね。

川口:レコーディングってどんな感じなんですか?

荻:基本、僕らは一発録りではなくて。クリックを聴きながら、最初は各パート同時に録るんだけど、ドラムがOKってなったら、次はベースをもう一回弾き直す。で、そのあとギターをもう一回弾いて。で、もう1本ギターを重ねて2本録って、ソロがあったらソロをまた弾いて、とか。で、最後に歌。僕らはそういう録り方をしてる。バンドによっては一発録り言うて、せーので録って、そのグルーヴがカッコいいってバンドもおるし。僕らは、それ挑戦したけど、ぜんぜんあかんかった(笑)。

大阪日本橋 Studio Cooperにて(2022年)

丹後の仲間らとのパフォーマンス

川口:コロナ前とか、丹後のイベントで弦ちゃんのこと見に行ってました。一緒にイベントもしましたね。そのパフォーマンスでやってたDTM(デスクトップミュージック)って、いつ頃からやってたんですか?

荻:結構前からやっとったね。友達がずっとやっとって。「弦ちゃん、ドラムの打ち込み手伝って」って言われて。「どうやる?」「まずPC買いましょう」って、そこから。日本橋に行ってPCやキーボード買って。それが、発進かな。

川口:一緒にやった「出力」や、健ちゃん主催でやった「Take it easy」のパフォーマンスかっこよかったです。丹後夜の市(2019年)も見に行きました。

荻:あれ、おもしろかったね。路上で。yasitと。絵面がよかったよね(笑)。

丹後夜の市2019(2019年8月3日)

川口:DTMはやっぱりおもしろいって思ったんですか?

荻:もちろん。まず、視覚でおもしろいって思った。サンプラーのパッドの感じとか。HIP HOPのトラックとか、こういうつくり方しとるんだっていうのが、まず新鮮だったね。自分の中ではなかったで。そうやって曲つくるようになって、昔から聴いとったトラックとか、それが分かり出してからがめちゃくちゃおもろなってきて。真似しよう思っても、できへんのよ。何が違うんだろうって思った時に、この人らって、めちゃくちゃすごいセンスと、めちゃくちゃ音楽を聴いてきとるんだなあと思って。たかがサンプリングなんだけど、選曲だったり、スライスのセンスだったり、どこをどう使うかとか、スネアのタイミングとか。音色1個1個の選び方だけでも、めちゃくちゃセンスがいるんだなっていうのが分かったわ。

川口:センスがいるって、分かります。

荻:僕は、パッとつくってパッと出したいっていう人で。でも、それではかっこよくならんって思って。めちゃくちゃ奥が深い。ハマる人はめっちゃハマるだろうな。僕もすげえ楽しいもんね、つくっとって。

川口:弦ちゃんのつくるメロディーって、私本当好きなんです。「出力」の時は、弦ちゃんの音に合わせて私が映像をつくって、健ちゃんが踊るってパフォーマンスだったんですけど、その時の音もめっちゃかっこよくて。サンプラーであれだけの音ができちゃうんですね。

荻:うん、あれだけで完結する。でも、やっぱり難しいね。自分の得意分野の、バンド系というか、コンストでつくるのと全然違うで、思うようにいかへんね。まぁ、そこがまたおもしろいんだけど。

川口:私は、弦ちゃんに曲をつくってって言える平井くんや健ちゃんがとっても羨ましかったです(笑)。それくらい、かっこいい。

出力/トークセッション“be locals again”(2018年5月26日)

積み重ねてきたから感じる、コンストの今

川口:弦ちゃんにとって、創ちゃん、小島さんはどんな存在ですか?

荻:創太は、やっぱり、兄弟って感じ。兄弟だで言いやすいというか、信頼されとるいうのはある。僕が「RETURN TO THE MOON」っていう曲を最初つくって持っていったとき、すげえ非難された。良さがわからん言われた。憶えとるもん。鶴橋の高架下を歩きながら、ハッといい曲ができて、これはいいなと思って、すぐつくって持っていった。「ちょっとやってくれ」言うて。僕もアカペラで歌ったりするやん。でも伝わらんのよ。「頼むで合わせてくれ」って言って合わせたら、「なんとなくええ曲ちゃう?」っていうくらいの感じだった。だけど、僕ん中では完成系のイメージができとった。で、レコーディングでようやく、「この曲めちゃくちゃええちゃう」言うて。最初は信用してくれへんかったけど、そういうのがコツコツと積み重なって、今に至るんかな。「弦ちゃんが、よくなるって見えとるんだったら、ええんちゃうか」と(笑)。

川口:そうやって得た信頼感は強いですね。

荻:小島は、曲づくりですごい重要なポジション。小島って、「こういうことがしたい」っていうのがすごいはっきりしとるんだ。曲つくりながら、「こういうコード進行どう?」って言うたら、「たぶん弦さんのやりたいことはこう違うか」言うて、弾いてくれて。それが絶えずずっとある感じ。すぐトライしてくれる。小島は、1時間ぐらいかけてみんなで考えたもんでも、僕が「いや、やっぱりこうして」って言うたら、「あ、ええよ」って平気で崩してくれるんよ。「メロディがそっちに合うんだったら、弦さんがそれでええんだったら、そっちが正解ちゃう」って言うてくれる。自分も出しつつ、メロディとか曲の良さを引き出そうとしてくれる。

川口:お互いの信頼が伝わってきますね。

荻:創太がシンプルな歌をバンとつくってきて、僕がそれをちょっとメロディをいじって、最終、小島がコードや何かを変えてくれるっていう。なんかそういうふうに、うまく機能しとるっていうんかな。珍しいと思うけどな。なかなかおらんと思う。

川口:そういう関係性だからこそ、それぞれを尊重し合えてるっていうことなんですね。

荻:そうそう。だから、今みんなリスペクトしとんちゃうかなあ。各々の良さを、各々が分かっとる。もちろん、あかんとこんも分かっとるだけど。でも、それゆえに、続けられるというか。

合言葉は #ReC9

川口:今後のコンストは、どういう風に進んでいきますか?

荻:どうなんだろうね。とりあえずいいものをつくりたいっていう、シンプルにそこちゃうかな。制作をしつつ、ライブでどんどん披露していって、曲を固めていって音源にしたいなっていうのは、ひとつの目標ではある。

川口:どんな曲をつくっていきたいですか?

荻:高校卒業の時に自分らで企画した「ラストロック」ってライブとか、あの頃の感覚をもう1回出したい。あの初期衝動を、今の自分らの感じで出したいって思うようになってきた。だから今回の曲も、影響を受けた音楽やアーティスト、出来事みたいな「ルーツ」を思いっきり出そう、もっと自分らの根本的なものをストレートに出していこうっていうのが、個人的にはコンセプトになっとる。これに影響受けてます、この曲みたいなことがやりたい、とか。それはストレートに出しても、結局自分らコンストになるのはわかっとるで、堂々といってもおもしろいんかなと。だから創太も、少年期にブルーハーツを聴いてとか、カセットテープに録音とか、それを歌詞に全面的に出しとる。これが、今の、これからのコンストの曲づくりのコンセプトになっとるかもしれん。歌詞しかり、曲しかり。

川口:コンストって、どんな存在ですか?

荻:そんなにでも、めちゃくちゃ大きいもんではない。気負いしない、一番表現が簡単にできる場所って言ったらええんかな。ベン・フォールズ・ファイブに出会ったあの衝撃を、自分がこんな簡単に表現できる場所って、コンストしかないなって思う。偶然というか、タイミング。ラッキーだった。ベン・フォールズ・ファイブを聴いたあの時から、小島から電話かかってきて、「やる」って言うまで、すべてがストン、ストン、ストンっていう。これぐらい全部がストンとくるようなこと、今のところ他では起きてないね。

川口:今回、コンストはリリースの合言葉として「#ReC9(Re CONSTRUCTION NINE)」を掲げてますね。弦ちゃんの話を聞いていて、原点回帰というか、まさにそうなんだなと感じました。きっと、メンバーそれぞれの「Re」があるんでしょうね。

荻:一回休止した時、僕はメンバーに、このバンドは60歳になってもできるバンドだと思っとるって言ったんよ。時代に左右されん、年齢関係なく歌えるバンドだと。もちろん、曲調は変化するかもしれんけど。変化しつつ、その時のコンストが出せるバンドだと思っとる。そういうバンドを目指したいなっていうのはあるかな。

川口:時代が変わっていく中で、変わる部分、変わらない部分を大切に、その時その時表現したいことをやっていく。コンストのこと、ますます好きになりましたし、新曲がますます楽しみです。今日は本当、ありがとうございました!

あとがき

地元の少し先輩ってだけなのに、こんなに高校ライフが違ったのかとびっくりしました。やりたいことは、自分たちでつくる。私がそのスピリットを持ったのは、Uターンで帰郷してからのこと。田舎は何もないんじゃない。「つまらないのは、自分がつまらないからだ」。この言葉の意味が今は良くわかります。高校時代からそれをやってた弦ちゃんたちはやっぱりかっこいいし、今もやり続けている姿はやっぱり憧れです。そして改めて感じました、丹後っておもしろい。

▼CONSTRUCTION NINE Webサイト
https://www.constructionnine.com/

▼CONSTRUCTION NINE Twitter
https://twitter.com/CONSTRUCTIONNI1


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