“また、着たくなったから。” LOCAL Tシャツ再リリース

2022.6.6

川口優子

みなさん、「LOCAL(ローカル)Tシャツ」をご存知ですか? 私が丹後に帰ってしばらくたった頃、ちょくちょくこのTシャツを着ている人に出会うことがあり、「何でみんな着てるの?」「私も欲しい」って密かに気になっていました。
ある時、友達を通して知り合った地元の先輩「平井くん」がつくっていると知り、ついに出会えた!と感動。念願だったTシャツを手に入れた時は、喜びを噛みしめました。

それから平井くんとは、イベントや制作なんかをいろいろ一緒にさせてもらう中で、すっかり仲良くなりました。今では、平井くんがやっている「CRAB WORKS(クラブワークス)」というグループの一員にも加えてもらい、感無量!日々、切磋琢磨しながら一緒にモノづくりを楽しんでいます。

そして、今年(2022年)に入ってすぐくらいの時、平井くんから「LOCAL Tシャツをもう一度つくろうと思うんだけど」と相談を受けました。LOCALが誕生したのが2013年。あれから9年経った今年、再リリースですと!?「嬉しい! しかも、そのデザインに私が関わらせていただけるなんて!」私は舞い上がりました。

そしてついに、LOCAL Tシャツが再リリースされます。今回、この企画を紹介しLOCALストーリーをみなさんに共有するとともに、平井くんへのインタビューを通して、私を惹きつけるLOCALの魅力を、自分なりに紐解きたいと思います。

前置きが長くなりましたが、みなさま、ぜひぜひ本文にお進みくださいませ ^ ^

また、着たくなったから。

「インタビューなんて恥ずかしい」と照れる平井くん(平井勇太)ですが、「川口さんなら」と引き受けていただいたこと、感謝します!

再リリースにあたり、平井くんはこのプロジェクトに「また、着たくなったから。」とコピーをつけました。「自分が思っていることを、そのまま言葉にしたかった」と平井くん。なぜ再リリースするかを自問自答した時、この言葉にたどりついたといいます。

再リリースのキービジュアルがこちら。撮影場所は御旅市場(峰山町にある、通称「日本一短いアーケードの商店街」)。丹後らしい、また、峰山高校出身である私たちには思い出深いスポットを平井くんがセレクトしました。撮影はシンタロウくん(田中槙太朗)。平井くんの同級生であり、私も仲良くしてもらっている先輩です。モデルは平井くんの後輩で同郷のマサノリ先輩(このために平井くんに呼ばれて大阪から帰省)。私は撮影当日に「はじめまして」でしたが、10秒で仲良くなりました。
撮影当日はあいにくのザザ降り。でも、「この天気も楽しみたい」という平井くんの言葉がすべてでした。


川口:平井くん、まず聞いてみたかったのですが、(再リリースにあたり)なんで私に声をかけてくれたんですか?

平井:自分が何かを表現していく時には、デザインの力が必要だと思っていて。地元で、川口さんというデザイナーにたまたま出会って、いくつかの制作を一緒にさせてもらう中で、少しずつお互いの理解なども深まってきて。それがつくるものにも表れてきて。で、当時、素人の俺がイラストレーター(デザインをするソフト)を使ってつくったあのロゴは、バランスなどを整え直したいと思っていたから。川口さんに相談するのは、俺の中ではもう当然の流れで。友達に一緒にやってもらえるのが一番おもしろいと思ってるので。

川口:それはめちゃ嬉しいです。私も、平井くんとモノづくりをしていて、自分の中で得るものが大きいなと感じていて、そんなタイミングでのLOCALは、とても特別なものにできそうでした。

ガソリン代を稼ぐために生まれた“LOCAL”

川口:ではまず、改めてなんですが、そもそもLOCAL Tシャツをつくったきっかけって何だったんですか?

平井:俺がまだ大阪にいた頃、そろそろ地元に帰って生活したいなと思っていて。でも、出会った友達や先輩と、丹後に帰ってきて距離が離れてもつながり続けていく理由がほしくて、ラジオやろうかっていう話になって。友達をゲストに呼べばいいんじゃないかな、と思って。

川口:ラジオってFMたんご(京丹後コミュニティ放送)さんですよね。

平井:そう。友達のピーちゃん(MC P-NUTZ)に紹介してもらって。「ラジオ蟹式」という番組を、幼なじみで友達のゲン(荻 弦太 / CONSTRUCTION NINE)と一緒にやり始めた(2015年10月に終了)。番組名は、単純に丹後だからっていう理由で、蟹式(笑)。で、俺たちの屋号もいるねってなって、蟹だから「CRAB WORKS」にした。どちらもすごく安直なんだけど(笑)。

川口:なるほど、そこで平井くんとゲンちゃんのCRAB WORKSが誕生したんですね!

平井:ラジオは、企画してから始めるまでに1年くらいかかっちゃったんだけど。毎回(大阪などの)友達をゲストに呼んで、丹後まで来てもらって収録して。

川口:いいですね、そうやって友達とつながりをつくれたこと。

平井:そう、ほんと友達のおかげ。付き合ってくれる友達がいたから、やらせてもらえたこと。で、番組が始まった頃はまだ大阪にいたから、ゲストと待ち合わせして、一緒に車で移動してて。だから、高速代とかガソリン代が要るでしょう。それなら物販的なものをつくって販売して、足しにできたらいいんじゃないかって話になって。で、Tシャツをつくろうと思った。

FMたんご “ラジオ蟹式”/ゲスト:山下裕介(2013年)

意識が変わった 3.11

平井:Tシャツに何をプリントしようかって考えていた頃、姫路にbachoっていう友達のバンドがいて、当時、キャリア初のフルアルバムをつくろうとしていたの。そのとき俺はもう地元に帰ろうと決めていたんだけど、だからなのか、自分自身に何か強い変化を求めていて。それで、彼らのその活動を記録しておくことが何かにつながるような気がして、よく撮影していたんだけど。

川口:動画を撮影するようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

平井:3.11(東日本大震災)が起きたでしょう。ものすごい数の人が亡くなった。自分たちと同じような暮らしをしていた人が、あのとき突然に、たくさん亡くなった。それがどういうことなのか、ちゃんと想像したのは、あのときが初めてだったと思う。とにかく、言葉にできないような、喪失感のようなものを感じてしまって。なんか、ものすごくビデオカメラが欲しくなって、すぐ買ったんだと思う。その気持ちを「記録する」ということで補おうとしたんだろうか、よくわからないけど。

川口:震災が平井くんの気持ちを変えたんですね。

平井:うん、あの出来事がきっかけで、いろんなことをちゃんと、想像せざるを得なくなった気はする。身近な人とか家族であるとか、自分以外の人たちのことも、ちゃんと。

川口:確かに、私も震災は衝撃でした。私はその時すでに丹後に帰ってきていたんですけど、実際に起きていることだと信じられなくて。現実を受け止められなかったです。

平井:自分中心に物事考えていたことが多かったことに気づいた。そうではない生き方をしないといけないなというか、したいなと思って。そしたら、地元に帰りたいな、って思うようになった。

川口:その喪失感から、「記録」をはじめたんですね。

平井:そうなのかも。正社員だった仕事もバイト契約にしてもらって、週末のたびに姫路まで行ったりして、スタジオやライブに付いて行かせてもらって彼らを撮影してた。撮影しながら、地元(姫路)を離れず、全国をドサ回りしながら音楽をやり続けていて、少しずつ活動の幅を広げていく彼らを見ていた。で、あるとき、ともあり(bachoのベース)の家にいた時、ふと思ったんだ。俺も地元帰るし、bachoも地元を離れずやってるし、“地元”かあって。じゃあ“LOCAL”にするかって。

川口:そこでLOCALってなったんですね。

平井:うん。で、姫路から帰って、その日のうちに、全然よくわかっていないイラストレーターを、わかる範囲で触って(笑)、ロゴの原型をつくって、すぐTシャツのプリント屋さんに連絡した。

川口:すごいスピード感!

平井:CONSTRUCTION NINEやUNCHAIN、ピーちゃんやオースティンのトシさん、言い出すとキリがないけど、地元の友達や先輩もいろんなところで着てくれて。

川口:だから私も知っていたんでしょうね。いろんな人が着ていたから(笑)。

平井:かわいがっていただいて、本当にうれしかったです。


bacho
1st Full Album CD「最高新記憶」
2015.02.25 release
Track7「高砂」Music Video
撮影・編集  平井 勇太 (CRAB WORKS)

コロナで決意した「再生」

平井:bachoがフルアルバム「最高新記憶」を完成させてリリースしたのが2015年。その年、bachoはずっとリリースツアーをやっていて。で、俺は行けなかったんだけど、ファイナルがたしか11月、東京、渋谷のO-WESTであって。平日だったんだけど、当日券が売れまくって完売したんだよ。

川口:すごい!!

平井:ツアー中も、キンヤ(bachoのボーカル/ギター)やメンバーのみんながLOCALを着てくれてて、そういうのをSNSとかで見たり。そのツアーファイナルでも着てくれていて。そういうの見てて、なんか俺、すごいもん見せてもらってるな、と思って。

FMたんご “ラジオ蟹式”/ゲスト:北畑欽也、伊藤知得(bacho)(2015年)

平井:で、2021年になっても、まだキンヤがくたびれたLOCALをライブで着続けてくれたりするのを、SNSで見たりして(苦笑)。これは、もうさすがに新しく刷ろうかなって思ってしまった。何年着てくれるつもりなんだよ、と思って(笑)。で、周り見たら、そんな友達や先輩がけっこういた(笑)。

川口:ライブでずっと着続けてくれるって、めちゃめちゃ嬉しいですよね。

平井:それまでも、いろんな方に「また新しくLOCALつくってよ」って声をかけていただくことはあったんだけど、自分の中でなんか更新できるような物語がないと、その気にならなかった。同じことやってもしょうがないかなと思ったりして。

川口:じゃあ、このタイミングで再リリースしようというのは、他にも理由があったんですか?

平井:コロナがあったからかな。いろんなことが抑圧、制限される中で、溜まってしまったものを解放したいって思いが強くなってきたときに、LOCALをもう一度始めてみてもいいのかなと思った。まだ着続けてくれている先輩や友達に、そう思わせてもらった。で、俺自身が、また着たくなってしまった(笑)。「再生」させてもらえるなら、なんというか、どんな続き方をするのか、見たくなってしまった(笑)。

平井:で、ロゴのデザインを見直したいと思っていたから、川口さんに相談して。

川口:話を聞いた時、インスピレーションとして、「力強いロゴにしたい」と思いました。LOCALという言葉や平井くんの人柄から、とにかくパワーを感じていて。あとは、コロナ禍ということで、同じく私も「再生」という言葉に希望を込めたかった。

平井:ファッションとしておしゃれなものをつくりたいというわけではなく、しっかり思いを込めたものをつくりたいというか。ちゃんと、ひとりの人に届くものをつくりたい、というか。

川口:LOCALが、歩き出すための支えになってくれたら嬉しいですね。

物語の続きをまた楽しみたい

平井:地元に帰ってきて、周りみても、それぞれ好きなことがあって、いろんなことやってる友達や先輩がいて。たまたま同じ地元、同じ時間。ほんまそういうたまたま、偶然を楽しむ、みたいなこと。

川口:めっちゃ分かります。私と平井くんが出会ったのも、たまたまですもんね。私の同級生の健ちゃん(梅田健太/シャギー)と平井くんが知り合いで、健ちゃんにダンスレッスンの様子を撮影してほしいって頼まれて現場に行ったら、平井くんが同じく動画の撮影で来ていて。

平井:そうそう。シャギーを通じて、川口さんと出会ったんだよね。

川口:あと、健ちゃんがうちの事務所の1階スペースで「出力」(2018年)ってイベントをした時も、平井くんとゲンちゃんと一緒にやりましたね。翌年、私がTシャツ展(2019年)っていう企画を主催した時も、平井くんや健ちゃんやシンタロウくんにも作家として参加してもらって。あの時は、作家さんたちが制作したTシャツの着用写真を私がそれぞれ撮影してまわったんですが、平井くんのつくった「I’m sorry Tシャツ」は、あみけん(峰山町の居酒屋)のトイレで撮影させてもらいましたね(笑)。

I’m sorry Tシャツ(2019年)

平井:LOCALもそう、自分がやりたいことがあって相談したら、シンタロウが写真撮ってくれたり、川口さんがデザインしてくれたり、ゲンが音楽つくってくれたり、マサノリがモデルになってくれたり。たまたまこの町で生まれて出会った人たちと、なんかいっしょにつくったり。そういうの、ほんとおもしろいよね。たまたま同じ場所、同じ時間。そんな偶然をせっかくだから楽しみたい。

川口:私はそれを「仲間」って呼んでますけど、何かをやりたいと思った時、そうやって一緒に遊んでくれる仲間が周りにいるって、本当幸せなことですよね。

平井:俺は「言葉」に強く影響を受けてきたところが大きい。「LOCAL」もそのひとつだと思う。いろんな人がLOCALを着てくれて、本当にいろんな物語を見せてもらったと思っていて。だから、今度はどんな物語につながっていくのかな、ということを楽しみたいなと思ってる。

平井くんの友達の山下さんが働く“Spanish Bar BANDA”(大阪福島)の周年イベントに、平井くんが贈ったBANDAオリジナルカラーのLOCAL Tシャツ(2022年)

川口:最後に平井くん、今後の展望は何かありますか?

平井:映像で何かを記録する、ということはやっていきたい。あと、自分のこれまでの人生の反省も踏まえて、いろんな「再生」の物語に関わっていけたらな、とは思ってる。また川口さんにもいろいろと相談すると思うのだけど、これからもよろしくお願いします(笑)。

川口:こちらこそです!! 私もデザイナーとして、いろいろな人の物語のお手伝いをしていきたいです。
平井くん、今日はほんと、ありがとうございました!

LOCALを着た平井くん(左)と私(川口)/撮影:田中槙太朗

LOCALの取材を通して、デザイナーとしての仕事の魅力にも改めて気づくことができました。これからも仲間と一緒に、楽しんでいきたいです!

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