「迂回をお願いします」のUX
2021.3.30
川口優子
はじめまして。グラフィック・Webデザイナーの川口です^ ^
出会いは突然です。そう、デザインも同じ。まちを歩いている時、買い物している時、ご飯を食べている時、運転している時…、いつもの日常をなんとなく過ごしている時、心が動くデザインにエンカウント(遭遇)することがあります。この特集では、私がエンカウントしたちょっと気になるデザインを、私視点で紹介していきます。
1.注意喚起はパッと見が大事
春になると、道路工事を多く見かけます。私も出勤時出くわすのですが、その時目に止まるが、「迂回をお願いします」などの看板。ドライバーは、看板の指示に従わなければなりません。運転にあまり自信がない私は、遭遇時なぜかドキドキです笑
道路標識の目的は、ドライバーにスムーズに情報や指示を伝えること。そのためには、遠くからでも気付いたり、パッと見で内容を理解できたりするデザインが求められます。
この春出合った「迂回をお願いします」の看板は、迂回しなければならい理由が淡々と黒い文字で書かれてあったのですが、「迂回」の文字だけが他の文字より大きく、赤い文字になっていました。そして、文字の周りは余白が少しとってあり、見やすい。大きく左向きの赤い矢印も書かれています。デザイン的には決しておしゃれではないのですが、役割を充分果たしています。設置は交差点。信号待ちで停止している人は、迂回しなければならない理由をしっかり読むこともできます。思わず「分かりやすい」と思ってしまいました。
2.求められるUX
デザインでは、今、UXが求められています。UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、「ユーザーが製品やサービスを使用するときの体験や経験」のことです。同じような言葉でUI(ユーザーインターフェース)というのがあるのですが、これは見た目のデザインの話です。看板のデザインでいうと、「誘目性」「視認性」「明視性と可読性」でしょうか。有彩色で彩度を高くする、明度差をつける、白地に赤が効果的、という見た目のデザインに関することです。
一方UXは、UIを包含しており、見た目のデザインだけでなく、体験まで考えていくことです。例えばスマホでサイトを見ていて、「このサイト情報も魅力的だしサービスも日常的に利用したい」と心が動かされること、これがUX(ユーザー体験)なのです。
では、道路看板におけるUXは何でしょうか?
3.道路標識のUX
道路標識UXを考えるとすると、どうなるでしょうか。一つのアプローチとしては、「メッセージ(文言)」でしょうか。
「迂回をお願いします」は、何気ない言葉ですが、その言葉には素直に従うことができます。例えばこれが、「迂回しろ」だったら、ちょっとイラっとしませんか?笑 短いワードですが、そこには配慮が感じられます。また、漢字と平仮名のバランスも意識します。「うかいをおねがいします」だったら、一瞬何が書いてあるか理解できないかもしません。瞬時に内容を伝えるには、そのバランスも大事なのです。
何より、これらUXを検討していくには、「運転している人がどうやったら分かりやすいか」というユーザー視点を持つことが大事です。「その人の気持ちになってみる」、いや~、なんかすべてに通ずるものを感じますね。
4.デザインの本質は「伝わる」こと
デザインは、おしゃれに、かっこよく、かわいく作ることが正解ではありません。伝えたいことを伝え、伝わることが大切です。「なぜそれを伝えたいか」「それはどうやったら伝わるかを」を考える。そこがおもしろいのです。
それはこれは、決してハードルが高いことではありません。「デザイナーってすごいね、私にはセンスがない」っていう人がたまにいますが、それはデザインの本質を、見た目だけだと思っているからなんじゃないかと思います。
デザインの本質は、伝わるものを作ること。もちろん、そのための手法(かっこよく、かわいくする力)は必要ですが、そもそも何のためのデザインかを考える力こそが大事で、これは、向き合えば誰にでもできることだと思っています。
そんな感じで、私も日々のデザインエンカウントを楽しみたいと思っています^ ^
これおもしろい! って情報、お待ちしています笑