心も写ルンです #1 八丁浜の海

2021.4.8
たんぽけライター
「いつかここに住みたい」


初めて来たときの感動を、
今でも鮮明に思い出すことができる。
2019年の夏。
3年前に移住していた先輩に誘われて、
夏休みの最後を丹後で過ごすことにした。
2019年8月30日。
TanTanPocketメンバーの井上健吾さんに
連れてきてもらったのが八丁浜の海。
ひとしきり「綺麗!」と叫んだあと、
カメラを片手に一緒に訪れた親友と
ただ無言で海を眺めていた気がする。

京都の山科、京都盆地の中のさらに盆地で
生まれ育った私にとって、
海は強烈な憧れであり、どこか不気味でもあった。

行き止まりがない水平線の先。
期待に胸をふくらませるか、不安にかられるか。
その碧さは、
期待でもなく、不安でもなく
どこか懐かしい景色だと感じた。
波の音が身体の真ん中で響く。
海に包まれているようだった。
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あれから1年半が経ち、
私はなんと、丹後で暮らしている。
2020年6月26日。
まだ引っ越すか迷っている頃に見た梅雨の八丁浜。
心を決めるために、足を運んだ。

いつも全力で丹後の魅力を伝えてくれる井上夫婦を
気づけば、とても頼りにしていた。
そして、どこかで羨ましくおもっていた。
生きることに正直であると感じていたのだ。
それはとても自然な生き方に見えた。

怖さをまるっとつつんだ安心感、
ここに来ることを選んだ。
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2021年2月。
とても寒い日曜日の夕方、
ほんのすこしの晴れ間を期待して、八丁浜へ行った。
残念ながら雨が降ってきたけれど、
冬の海は強くて儚くて、また好きになった。
今、その写真を現像に出している。
どんな「心」を映しているのだろう。
ドキドキする。
そのときに感じた「大切な感情」をいつでも想いだせるように、
私は何度でも、写ルンですのシャッターを切る。
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特集
〈心も写ルンです〉
2017年に親友と企画した「たのしく写ルンです」
というイベントで虜になった「写ルンです」。
以来、2ヶ月に1台程のペースで
「写ルンです」を使いつづけています。
心が動いた瞬間と留めておくのにちょうど良くて。
数ヶ月後に現像して、もう一度向きあう
心動かされた「何か」。
そのとき、何を想い、何を感じていたのか。
時間の経過によって実感できた「心」を
言葉にして紡いでいこうとおもいます。
小学生の頃、修学旅行に持って行った「写ルンです」、
たくさん考えた24枚を今もアルバムに残しています。