心も写ルンです #1 八丁浜の海

「いつかここに住みたい」

初めて来たときの感動を、

今でも鮮明に思い出すことができる。

2019年の夏。

3年前に移住していた先輩に誘われて、

夏休みの最後を丹後で過ごすことにした。

2019年8月30日。

TanTanPocketメンバーの井上健吾さん

連れてきてもらったのが八丁浜の海

ひとしきり「綺麗!」と叫んだあと、

カメラを片手に一緒に訪れた親友と

ただ無言で海を眺めていた気がする。

京都の山科、京都盆地の中のさらに盆地で

生まれ育った私にとって、

海は強烈な憧れであり、どこか不気味でもあった。

行き止まりがない水平線の先。

期待に胸をふくらませるか、不安にかられるか。

その碧さは、

期待でもなく、不安でもなく

どこか懐かしい景色だと感じた。

波の音が身体の真ん中で響く。

海に包まれているようだった。

あれから1年半が経ち、

私はなんと、丹後で暮らしている。

2020年6月26日。

まだ引っ越すか迷っている頃に見た梅雨の八丁浜。

心を決めるために、足を運んだ。

いつも全力で丹後の魅力を伝えてくれる井上夫婦を

気づけば、とても頼りにしていた。

そして、どこかで羨ましくおもっていた。

生きることに正直であると感じていたのだ。

それはとても自然な生き方に見えた。

怖さをまるっとつつんだ安心感、

ここに来ることを選んだ。

2021年2月。

とても寒い日曜日の夕方、

ほんのすこしの晴れ間を期待して、八丁浜へ行った。

残念ながら雨が降ってきたけれど、

冬の海は強くて儚くて、また好きになった。

今、その写真を現像に出している。

どんな「心」を映しているのだろう。

ドキドキする。

そのときに感じた「大切な感情」をいつでも想いだせるように、

私は何度でも、写ルンですのシャッターを切る。

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特集

〈心も写ルンです〉

2017年に親友と企画した「たのしく写ルンです」

というイベントで虜になった「写ルンです」。

以来、2ヶ月に1台程のペースで

「写ルンです」を使いつづけています。

心が動いた瞬間と留めておくのにちょうど良くて。

数ヶ月後に現像して、もう一度向きあう

心動かされた「何か」。

そのとき、何を想い、何を感じていたのか。

時間の経過によって実感できた「心」を

言葉にして紡いでいこうとおもいます。

小学生の頃、修学旅行に持って行った「写ルンです」、

たくさん考えた24枚を今もアルバムに残しています。