絵本で大好きを伝える「ねぎぼうず文庫」奥田さん

2024.6.5

Daido Shota

はじめまして!昨年末に京丹後にUターン移住した大道です。妻と娘(1歳3ヶ月)がいて、娘は絵本が大好き!朝起きてすぐ絵本を持って「読んで!」と叩き起こしてきます。笑

そんな私が今回話を伺ったのは大宮町にある私設図書館の「ねぎぼうず文庫」。ずっと前から行きたいと思っていた場所です。途中横で聞いている妻が泣いてしまうハプニングがありましたが、とってもいいお話が聞けました。

全母に読んでほしいインタビュー、始まります!

――本日はよろしくお願いします。早速ですが、すごい絵本の数ですね!絵本は以前からお好きだったんですか?

元々本を読むのは好きでしたが、絵本を好きになったのは子どもが生まれてからですね。長男が半年ぐらいの頃、地元の兵庫県加古川市にある「ジオジオ」という子供の本の専門店に出会ったんです。入ってみると絵本がブワーッと並んでいてこれめっちゃいい〜となりました。

そこで、ブッククラブという今でいうサブスクのような形で店主さんが選書をして本を送ってくれるサービスに申し込みました。数十年経った今でも続いていて絵本は増え続けています。ここにある絵本もほとんどはジオジオさんが選書してくれたものなので、プロの目を通った自信を持っておすすめできる絵本ばかりです。

――プロの目を通った絵本がずっと増え続けているんですね。量も質もすごい…!ねぎぼうず文庫を始めたきっかけは何だったんですか?

きっかけはくまのプーさんやピーターラビットなどの翻訳をされていた石井桃子さんの「かつら文庫」という文庫活動を知ったことでした。これを見つけた時に「私もやりたい!」となったんです。文庫というのはいわゆる私設図書館のことです。30年ほど前から始めたのですが、当時私は京都市内の団地に住んでいて、自分でチラシを作って団地のポストに配って宣伝していました。

――30年前から!ちなみに気になったんですが、なぜ「ねぎぼうず」なんですか?

息子たちが当時はまっていた「ねぎぼうずのあさたろう」という絵本に因んで「ねぎぼうず文庫」という名前にしました。

ねぎぼうずのあさたろう、お借りしました!

――そういえば奥田さんはなぜ丹後に引っ越したんですか?

丹後は夫の地元で、婚約時代に丹後半島1週ドライブに連れてってもらいました。海と畑と田んぼとゆったりした時間の流れ、夫の家族や地元の人たちのアットホームな雰囲気に子育てするなら絶対ここでしたい〜!となりました。

――こんな素敵な文庫を丹後でやってもらえて本当に嬉しいです。30年文庫活動をされているとのことですが、これまでに大変だったことや記憶に残っていることはありますか?

途中、子育てに悩むことがあって、子どもと向き合う時間を取るために文庫を閉めがちになっていた時期がありました。当時はアドラー心理学をもとに子どもとの関係性を見直すことに取り組んでいました。

子どもはかわいいし夫も子育てを手伝ってくれる恵まれた環境の中で、なぜこんなにしんどいのか…。今は言語化できるけど当時はモヤモヤばかり募って、夫にも「なんで私ばっかり」と不満をぶつけてしまい、子どもにも八つ当たりしてしまうことがありました。「ちゃんとせなあかん」「良い母親でおらなあかん」という思いでがんじがらめになっていました。

そんなしんどい中でも、「何かやりたい」という気持ちがずっとありました。何者でもない自分が何者かになりたくて。

(ここで隣で聞いてる妻号泣)

――奥田さんの言葉が響いて妻が泣いちゃってます!すいません!

とても和やかな雰囲気でインタビューさせてもらいました!

――そこから現在のねぎぼうず文庫の姿になるまで、U設計室 に依頼してリノベーションされてるんですよね。リニューアルまでの経緯を教えてもらえますか?

元々夫の祖母が住んでいたこの部屋が空くことになり、ここを使って文庫を本格的に再開したいと思っていたときにU設計室の大垣優太さんに出会い、リノベーションをお願いすることにしました。

工事が完成してまもなく文庫活動を応援してくれていた義母が亡くなり、その後1年間は心の整理がつかず何もできずにいました。そこへ優太さんの母であり、子育て支援団体の ゆるりら を運営されている大垣いづみさんが訪れて、「絶対にやろう!できる!私も来るから!」と励ましてくれました。いづみさんの言葉で、私も「そうやな、ぼちぼち始めな」と思いました。

――大垣ファミリーのパワーすごいですね!笑

はい笑。ただ、どうやって進めていけばいいのか、自分が文庫を続ける理由がわからなくなっていました。絵本は好きだし、みんなにも勧めたいのですが、「何のために文庫をやるの?」というのが自分でもわからなかったんです。そんなとき、絵本講師の上甲知子さんと内田早苗さんのブログに出会いました。それを読んでいるうちに、「私はこれがやりたいんや」という気持ちが湧いてきました。

そこには「読み聞かせのときに、子どもが聞いてようが聞いてまいが読む」と書かれていて、それが衝撃的でした。絵本って子どもが小さい時はおとなしく最後まで聞いてないですよね。途中でどっか行っちゃうし、ページをどんどんめくっちゃうし…。でも読み聞かせはそれでいい、彼らが望むようにしてあげればいいし、我々は開かれたページを読んで音に変えてあげるだけでいい。子どもたちが自分から聞きたいと思うからこそ「聞く力」が育つということが書かれていました。そういうこと自分が子育ての現役の時に知りたかった〜!と思いました。

で、さっきの子育て悩んでた時の話に戻るんですけど、当時は自分のことがとても嫌いだったんです。ねぎぼうず文庫みたいなことやってると周りからすごくいい人みたいに思われるかもしれないんですけど全然そんなことなくって。裏テーマとして私はこの文庫活動を通じて自分を好きになりたい。お節介だけど、ここに来る人も自分のことを好きでいて欲しいと思っています。

いづみさんやママ友たちにそんなことを話して「それでいいやん」と言ってもらえて、やっと前に進むことができました。30年かけてようやく、今の形になりました。

――本当に素敵です。改めてどんな人に「ねぎぼうず文庫」に来て欲しいですか?

子育て世代の人はもちろんですが、できれば子育てを終えた人やこれから子育てする人にも来てほしいです。子育てはとても大変なことですし、私自身もがきまくりました。だから、子育てを終えた人やこれからの人も含めて、みんなで一緒に子どもを育てていくことが、一番幸せな世界につながると思っています。

また、今は絵本に興味がない人にもぜひ来てほしいです。絵本って大人も救われるんです。子どもに「大好き」と言いたくっても、なかなか面と向かって言えないことがありますが、絵本を通じてなら伝えられます。声に出して読むことで、自分自身も救われますし、聞いている人にもその気持ちが伝わります。だから、絵本は大人にとってもおすすめなんです。

――最後に今後の展望はありますか?

今は月に2回から4回しか開けてないけど、もっと「暮らすように開けたい」と思っています。ずっと絵本を読み続けていけたらいいなと考えていますし、子どもに絵本を読んでくれる人が増えていけばいいなとも思っています。

今、戦争や貧困、環境問題などさまざまな問題がありますが、絵本を読むことが必ずそれらの解決に繋がっていると信じています。無力に感じることもありますが、絵本は読める。だからこの活動を続けたいと思っています。

色々言ったけどすべての根底には「自分を好きになりたい」という気持ちがあります。それが私の裏テーマです。

――私も娘に絵本を読み続けようと思います。今日はありがとうございました!

あとがき

この日「ねぎぼうず文庫」へは二度目の訪問で、初めて訪れた時から絵本に囲まれた素敵な空間と奥田さんの温かな人柄に魅了されていました。インタビューでは「絵本で大好きを伝える」「自分を好きになりたい」など心に響く言葉もたくさん。お話を聞いてこれから娘と絵本を読む時間をもっともっと大事にしようと思いました。みなさんもぜひ行ってみてください!

ねぎぼうず文庫

※毎月の営業日は公式LINEをご確認ください。
公式LINE: https://liff.line.me/1645278921-kWRPP32q/?accountId=047dvtrn
Instagram: https://www.instagram.com/negibouzubunco/

秘密基地もあるよ。探してみてね!